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東京高等裁判所 昭和51年(ネ)3113号 判決

一 控訴人が本件特許権をその主張の期間有していたこと、本件特許請求の範囲の記載が控訴人主張のとおりであること、本件特許発明の構成要件は控訴人主張(請求の原因二(1)ないし(5))のように分解できることは、いずれも当事者間に争いがない。

二(一) そうすると、本件特許発明においては、表面強化繊維板の製造法として、少なくとも核心層に「小裂木片或は小砕木片」を原料木片として使用することが必須の要件であることは多言を要しない(構成要件の(2))。

(二) ところが、控訴人は、右核心層用原料木片たる小裂木片或は小砕木片について、これは単なる「粗い木片」のことであり「幅広い平らな表裏二面を持つた薄片状のもの」を含むと解すべきである旨主張する。

そこで検討するのに、

1 本件特許明細書の特許請求の範囲の記載は、前記のとおりであつて、この小裂木片或は小砕木片について特に定義してはいないので、それ自体では明確でない。しかし、表面層用の素材については「薄くて平らな幅広い鉋屑状の小削木片」と記載しているのに対し、核心層用の素材については「小裂木片或は小砕木片」と記載し、両者を明確に区別して表現しているから、その間には何らかの差異があるはずである。

2 そこで、成立に争いのない甲第一号証(本件発明の特許公報)によれば、「発明の詳細な説明」においても、表面層用の原料木片については、「枠付加圧加工機内に機械的に分布せしめられ、しかもその形状の為に多かれ少かれ平行に重なつて横たわる傾向を有する小さな平らな薄い木片が使用される」(公報二頁右欄末尾から2行~三頁左欄2行)、「平らな薄い鉋屑状の小削木片を用いその大きさは〇・五―五cm2を使用する。」(公報三頁右欄31行~33行)、「先に選別せられたより美しい粗い塊状の濶葉樹の屑材料は例えばこれに適した機械によつて薄い平らな鉋屑片状の薄片にせられ、かくして小さな薄い鱗片状の小片を生ずる。」(公報四頁右欄15行~18行)と記載されているのに対し、核心層用木材については、「製造さるべき板の核心層のための粗い木片は屑木材から著しい動力消費なしに適当な粉砕機内で粉砕することによつて得られるが、この場合粉砕機内では屑木材は叩き割られあるいは裂き割られるのである。その大きさは長さ五―五〇mm幅五―一〇mm厚さ一―五mmにする。」(公報三頁右欄26行~31行)と記載され、実施例においても、「ベニヤ板、合板、家具等の製造所からの屑木材を打撃粉砕機内にて、長さ五―五〇mm、幅五―一〇mm、厚さ一―五mm程度の片を生ずるように加工する」(第一例)、「ベニヤ板用剥削器加工の残物、製材残物、円板状に残つた幹端、外皮その他及びそれがまだ健全であるかぎり古材等の如き塊状の固い濶葉樹の木材を利用しようとする場合、より美しい、大きい塊をなした木材層を選別し、その木材の残りの部分を極めて粗く斧割りし又は打撃粉砕機内にて長さ五―五〇mm幅五―一〇mm厚さ一―五mmの小裂木片或は小砕木片に分解する。」(第二例)、「第一或は第二例に記載した様な屑木材を中核層の材料として要求せられる長さ五―五〇mm幅五ー一〇mm厚さ一―五mmに粉砕する」(第三例)と記載されている。

3 これらの記載に照らすと、本件特許発明における核心層用木片たる「小裂木片或は小砕木片」は、雑多な木材片を叩きもしくは裂き割り粉砕して作られるような、不規則で粗い、ある程度の厚み(最も薄くとも一mm程度)のある小木片を指し、シエービングマシン(切削機)によつて製造されるような、薄片状をした切削木片を包摂するものでないと認められる(後者はむしろ表面層にこそ用いられるものである。)。

このことは、公報に記載された本件特許発明の企図する作用効果ないし経済上の利点、すなわち(1)「木材屑をその材種、大きさ、形状及び色彩に無関係に利用する事が可能となる。更に板の主要部を形成する核心層に対してはエネルギー及び結合剤の消費が少くてす(む)」(公報一頁右欄18行~21行)、(2)「(核心層を)形成する木片間に肉眼で容易に見える程度の空隙が残されることになり、大部分元来表層に含まれていた水分に基く、加熱作用下で発生した蒸気がこの空隙を通つて板の縁部に到達し外部に逃れ出ることができるようになる」(公報三頁左欄23行~27行)、(3)「内層に接する水分の多い薄片はそれに隣接する木片と同じ形になり且大きな接触面積でこれを固着することができるから、この表層は内層に非常に強く接着されることとなる」(公報三頁左欄34~37行)、(4)「かくして得られた板の平均密度は正に核心層にある多数の且顕著な空隙の為に集結した木片群よりなる従来提示されたいかなる木板よりもはるかに小さい」(公報三頁左欄41行~44行)などの事柄を達成、発揮するためには、前記認定のような形状の木片であることが最も有効であり、逆に前記薄片状切削木片であれば、全くとはいえないにしても十分に右の結果が達成、発揮できないと考えられることからも、裏付けられる。

4 ところで、前記甲第一号証によれば、本件特許明細書の第一実施例には核心層用木片の材料の一つとしてベニヤ板の屑木材を挙げた記載が認められるけれども、右の記載は、「小裂木片或は小砕木片」を製造するための材料の一つの例としてベニヤ板の屑木材を用いうることを述べているに過ぎないのみならず、ベニヤ単板を打撃粉砕した場合には概して幅広い平らな薄片状の切削木片となることを認めるに足りる証拠もない。

5 さらに、本件特許請求の範囲では核心層木片の大きさについての数値限定はないけれども、前記甲第一号証によれば、「発明の詳細な説明」欄においては、すべての例が長さ五―五〇mm、幅五―一〇mm厚さ一―五mmとなつていることが認められ、幅広い平らな薄片状の切削木片とは言い難いものである。

6 また控訴人は、本件特許出願の優先権主張日当時における公知技術たる「フオール特許」との関連(控訴人は、そこでは限定された寸法、形状の木片を核心層に用いると主張し、これと対比して単に「粗い片」と表現したと主張する。)等を種々主張して、本件特許発明における「小裂木片或は小砕木片」についての控訴人の解釈を裏付けようとしているが、以上検討した結果に照らすと、成立に争いのない甲第一四、一五、一六、二三各号証を参酌しても、控訴人主張の解釈を首肯することはできない。

以上のとおりで、本件特許請求の範囲にいう「小裂木片或は小砕木片」は、シエービング機械によつて製造されるような、幅広い平らな薄片状の切削木片を含まないと解するのが相当である。

三 ところで、被控訴人が、熱プレスに挿入して圧縮する際生ずる蒸気を核心層用木片の間の空隙から外部に排出させていたとの点を除き、控訴人主張の方法でパーテイクルボード (人工繊維板)を製造して販売していたことは当事者間に争いがなく、被控訴人のパーテイクルボード製造方法において用いられる核心層用木片については、原判決認定のとおりであるから、原判決七丁裏末尾一行から一〇丁表末尾から三行目「められる。」までの記載をここに引用する。

そうすると、被控訴人方法において用いられる核心層用木片は、厚さ〇・一mmないし〇・八mm、平均約〇・五mmという薄片状の切削木片であつて、むしろ表面層のものと近似し、本件特許発明の必須要件である前認定の意義の「小裂木片或は小砕木片」に該当するといえないことは明らかである。

四 しかしながら、控訴人は、被控訴人方法において用いられている核心層用木片は、本件特許発明にいう「小裂小片或は小砕木片」と均等物であると主張するので、この点について検討するのに、前記甲第一号証によれば、本件特許発明は、前記のような公報記載の作用効果のうち、少くとも、核心層用木片として「小裂木片或は小砕木片」を使用することにより木材屑を材種、大きさ、形状及び色彩に無関係に使用することができ、また切削木片と異なり「小裂木片或は小砕木片」は木材屑を粉砕機内で叩き割りまたはひき裂くだけで得られるから木片製造のためのエネルギー消費量を節約できることが認められるのに対し、被控訴人方法における核心層用木片は右のような作用効果を奏しうるとは認められないから、被控訴人方法における核心層用木片を本件特許発明にいう「小裂木片或は小砕木片」の均等物とはいえない。

五 そうすると、その余の点について判断するまでもなく、被控訴人方法は本件特許発明の技術的範囲に属するとはいえないから、被控訴人方法が本件特許発明の技術的範囲に属することを前提とする控訴人の本訴請求は理由がなく、これと結論を同じくする原判決は正当である。

六 よつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとする。

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